ふすまの基礎知識

■ 織物系ふすま紙

葛布

「葛布」のことを知っている方がこのふすまを見れば「いいふすまが入っていますね」ときっと声をかけられるはず。かつては高級旅館や一流料亭、旧家などで見られた最高級ふすま紙です。

秋の七草の一つとして愛されてきた葛。「葛布」は葛を刈り、煮て寝かせて発酵させ、洗って…とさまざまな工程を経て、一枚一枚手織りで仕上げられます。すべてが手作りで、微妙に異なる味のある表情を見せてくれます。大変丈夫で破れにくく、丁寧に扱えば「50年は持つ」と言われているほど。10年ほどのゆっくりとした時間をかけて、徐々に飴色に変化するふすま紙です。長い目で見るとこの価格はかえって安いかもしれません。
しっとりと風格あるお部屋に仕上げたい時には是非葛布をご指名ください。


芭蕉布

「芭蕉布」は沖縄の手織りものとして大変有名な布です。確かに元々は沖縄の芭蕉布を使って作られたふすま紙を「芭蕉布」と呼んでいたようですが、今日では、沖縄の芭蕉布を使って作られているふすま紙はほとんどありません。現在、芭蕉布の襖紙(ふすま紙)と呼ばれるものの生産地は静岡です。かつては「西の芭蕉布、東の葛布」と云われ、東の高級旅館や料亭、旧家などでは葛布を高級襖紙(ふすま紙)とし、それに対して、西の高級旅館や料亭、旧家などでは芭蕉布を高級襖紙(ふすま紙)として利用されてきたとか。

芭蕉布の襖紙(ふすま紙)は、縦糸に麻糸を使用し、横糸に芭蕉繊維を使用した織物で、紙で裏打ちされた織物の襖紙(ふすま紙)。
かなり丈夫で、設置されたお部屋の環境にもよりますが、数十年は使用することができるふすま紙です。


絹しけ

絹しけは、その名のとおり「絹」をつかった織物のふすま紙。絹織物に裏打ちした大変丈夫なふすま紙です。 繭の外皮から引き出したあら糸を横糸にした絹織物。糸そのものの不揃いさや打ち込みの不揃いさが独特の風合いをつくります。本絹しけ、絹しけ共、無地ものがほとんどです。

本絹しけは、国内産絹糸100%の織物に、越前和紙を裏打加工したもの。使用される絹糸は、蚕の糸を数十本合わせて作られるために、糸の太さや紬(つむぎ)が不規則となり、織段や紬が得られる味わい深いふすま紙です。絹の染色から張り合わせ、仕上げ加工まで一貫して手作業で作成されるため、一枚一枚の表情が微妙に異なります。


本紗織

本紗織のふすま紙は、横糸を麻、縦糸を木綿で作られた織物の伝統的なふすま紙です。かつて、織物系のふすま紙では、一番の需要を担ったふすま紙。

手触りは芭蕉布ほど固くなく、やわらかい感じがします。
所々、糸によって自然な光沢があり、織り目も細かく、丈夫で長持ちするふすま紙です。色は、自然な色目の無地になります。


紗の襖紙

一般的に「織物のふすま紙」と言われるのはこの紗のふすま紙です合成繊維で作られたふすま紙です。紙系のふすま紙に比べて破れにくいのが最大の特徴です。安価なモノは織り目が粗く、高級品になると表地は布のようになっています。はもちろん、古典的な柄ものや現代柄も多くあります。

天然素材の織物は無地のものが大半ですが、合成繊維の織物系ふすま紙には無地と柄物が豊富にあります。