丈夫な襖「襖の下張り」

丈夫な襖「襖の下張り」

昨今は「安価なもの」として段ボールやスタイロ(発泡スチロール)の骨を使用されるところもありますが、張り替えができない使い捨てふすまとなってしまうため、当店では受注はしておりません。当店で新調をお伺いした場合「ふすま骨」はチップボール(骨に厚手の紙が張られたモノ)を主に使用しております。

当店では、「チップボール骨」の上に「法具紙」でベタ張りをし、上質の紙で袋張りをして上張りをします。
(並下張り、上下張りで「紙」と「下張り回数」が異なります。)
張替えの際、下張り紙が破れている場合は、補修をし補強をして袋張り、そして上張りをします。上から張ってしまうと見えなくなってしまう下張りですが、この下張りで「丈夫な、長期間使えるふすま」となります。

下張りにはさまざまな紙と張り方があります。
高級なものほど下張りの回数が増え、紙を重ね貼りすることにより襖の表紙が湿気によって襖表紙が波打つのを防ぐとともに、丈夫にします。貼った紙が十分に乾いてから次の作業を行うため、下張りの回数が多くなると作成に時間を要します。しかし、それだけ手の込んだふすまであれば、破れにくくなるのはもちろん、一生モノのふすまができあがります。

*本襖(和襖)での施工も承っております。詳細はお問い合わせください。

1.骨しばり 2.打ち付け張り
骨しばり 襖骨に手透き和紙などの繊維の強い和紙を張り、襖骨(組子骨)を締め付けてガタつきなどがないようにします。 打ち付け張り 襖骨(組子骨)が表面から透けないように、また「骨しばり」をより強固にするための重ね張りです。
3・4.蓑張り/2回以上
蓑張り 蓑張り紙をずらしながら重ねて蓑のように貼る方法です。蓑虫は枯れ葉や枯れ枝に粘性の糸を絡め、袋状の巣を作ります。この蓑張りという名前の由来は、紙上部のみにのりをつけ、下部はペラペラとなったままの状態で、その形状が蓑虫の巣のように見えることからだと考えられます。(重ね張りとも呼ばれます。)紙は薄い手漉き和紙、茶チリ紙、反古紙などを使用します。
*使い古しの手紙や大福帳などが使用されています。
今回は「明治時代の大福帳」を使用しています。
5.ベタ張り(蓑押さえ) 6・7.袋張り(浮け張り)/2回
蓑押さえ 「蓑張り」の紙を固定させるために上から紙を貼ってゆきます。 薄手の手漉き和紙、代用石州、茶チリ紙などを用い、紙の周囲にだけ細くのりをつけて袋状に貼付けてゆきます。壁などに和紙を貼る際にも用いられる方法です。袋状になった下貼り紙が和紙本来のふんわりとした表情をかもし出します。
8.上張り
表面の紙(織物、本鳥の子など)紙の素材に合わせてのりの濃さを調節し表紙を貼ります。

下記数字は下張りの回数を表します

 
十一遍張り
八遍張り
骨しばり
1
1
打ち付け張り
1
1
蓑張り
4
2

ベタ張り
(簑押さえ)

1
1
袋張り
2
2
清張り
1
上張り
*1
*1
襖の下張り 「今、丈夫である」ことと「長年、丈夫に使用できる」ということ

「今、この時、丈夫な襖がほしい」となった場合、「厚い紙」を数枚貼れば丈夫な襖が出来上がります。しかし、厚手の紙は数枚でも重ねると厚みがでます。襖本体と縁に段差ができることは避けなければなりません。その上、襖を長期にわたって使用しようとした場合、その「厚い紙」を作った繊維が問題となります。

たとえば「繊維の短い紙(古紙など)」で作られた襖の下張りは、長年使用していくと「紙の劣化」によって、指で軽く押しただけで貼られていた下張り紙はパラパラと崩れ落ちてしまいます。しかし、どんなに薄い紙でも「繊維の長い紙(楮繊維等が入った和紙など)」は、年数が経っても粘りがあり、崩れ落ちるように破れる事はありません。これは、上張りの紙でも同じ事です。

「何年その襖を使用したいのか?」によって、「下張りの仕様」や「上張り紙」を検討する必要があります。