〜掛軸に限らず表具は、修復をして作り直しが出来ます〜
お客様よりお預かりした掛軸は、本紙(絵の部分)に折れがあり、大きな穴が空いて、巻くと絵の部分がパラパラと崩れ落ちてくるような状態です。
表具の修復は、裏から張られている和紙をすべて剥がし、折れた部分、穴が空いた箇所を直して、新しく掛軸や額、屏風などにします。仕上がると分からなくなりますが、本紙(絵の部分)は保存と補強のため裏から幾重にも「和紙」が張られています。
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掛軸、屏風、衝立、額、巻物、襖、障子など「和紙」に関わる商品作成などを生業とする職人を「表具師」といいます。
古い掛軸、屏風などの修復はもちろん、新しい作品をお預りして、表装(掛軸や額にすること)をするのも表具師の仕事です。
薄い和紙に書かれた書や絵は、そのままでは水分を含んでシワが出ます。そのシワを綺麗に伸ばし、
長きに渡って作品が傷まないよう、作品を保護する「肌裏」という薄い和紙を裏から張ります。
きちんと直された表具は、何度も修復することが出来、この先数十年、いえ修復を重ねれば美術館に保存されている表具のように、数百年もの長きの時間、お部屋を彩ってくれます.
表具の修復は本紙(作品)を外し、すべての裏打ち(補強などのために裏から張られている和紙)を剥がすところから作業は始まります。
掛軸の生地部分をすべて取り除き、本紙(作品)裏に貼られた総裏、増裏、肌裏などの和紙を水分を含ませながら慎重に剥がしてゆきます。
*本紙の状態によって「裏打ち」を残すこともあります。
写真はすべての裏打ちを剥がした状態です。
次に、本紙の穴をふさぐため本紙の色に合わせた和紙を本紙裏から張り込みます。
「肌裏」と呼ばれる和紙を張り込んでゆきます。
今日私たちが、江戸時代に作られた掛軸などを鑑賞できるのは、この「肌裏」で本紙を補強をしてあるからです。「肌裏」はとても重要な裏打ちとなります。
「肌裏」を張り終えたら、ひとまず吊り干しをして乾かします。
本紙、肌裏を乾かし、「肌裏」の上から本紙の折れている箇所に「折れ伏せ」と呼ばれる和紙を張ってゆきます。「折れ伏せ」は、紙折れ部分の補強をします。
この後、仮張り板に張り込み、仮張りをして本紙を伸ばし、ゆっくりと乾かします。
これで修復作業は終わりました。水につけただけで、ホコリや汚れが取れ、鷹の胡粉(白い絵の具)部分が美しく浮き上がりました。ここから掛軸に仕上げたり、額装にしたり、屏風や襖などに張り込む作業になります。