ふすまの基礎知識

■ 紙系ふすま紙
唐紙 /京からかみ・江戸からかみ

「からかみ(唐紙)」とは、中国の唐から伝わった美術紙。
主にやんわりと光を放つ雲母(花崗岩の結晶の粉)や胡粉(貝殻をすりつぶしたもの)を使用して、さまざまな伝統文様を木版刷りや紗型刷りをした紙です。昨今は雑誌などにも取り上げられる事が多くなり、一般のお客様も「からかみ」とご指定でご来店されることもしばしば。

「からかみ」の模様は光の角度で微妙に変化します。それは「雲母」という花崗岩の結晶の粉。お化粧品にも使用されている鉱物です。

一枚一枚、職人によって丁寧に版付けされた「からかみ」は、数百年受け継がれた伝承の技と飽きのない日本の伝統文様の織りなす日本の「美」。「からかみ」に使用されている文様は、着物はもちろん、さまざまな日本文化に使用されているもの。松竹梅、鶴、亀などのお祝い文様や四季折々の草花、雲や波などの自然を形にした文様などがあります。引手も同じように日本の文様をあしらった物が多くあります。ふすまを張替え、新調される際に「からかみ」の柄と引手を合わせることで「粋な意匠」を引き出せるかもしれません。

当店では、各種からかみの見本帳を常備しております。お気軽にご来店下さい。

【京からかみ】

京からかみ

からかみは平安時代に中国から渡来した「紋唐紙」。「唐紙」とあるように中国から伝わった紙だそうです。しかしながら、「唐紙はもろくて…」と小野小町も歎いたほど紙の質が悪かったそうで、詠草料紙として日本の和紙に柄を摺り始めたのが「からかみ」の始まりなのだとか。
京からかみには公家好み、武家好み、茶人好みなどの区分があり、建物や好みに合わせていろいろな文様が施されています。
京からかみの版は主に「朴(ほお)の木の版木」。柔らかく、彫りやすい朴の木の版木は数百年の時が経っても滑らかなのだそうです。布の張られた扇のような道具で版木に染料を乗せ、手のひらで撫でて文様が摺られます。
古い木版は作られた時代の「漉かれる和紙の大きさ」によって変化しているのが面白いです。

【江戸からかみ】

江戸からかみ

江戸が首都になる徳川時代。さまざまな職人を江戸に招き入れ?連れて行き?からかみの職人もご多分に漏れず江戸へ。そうして作られたのが江戸からかみなのだとか。
江戸は火事が多く、また人も多く江戸からかみの需要も大。火事の多かった江戸で版木は焼けてしまい、作成に時間がかかってしまうため、また注文が多く版木だけでは間に合わなかったため、「伊勢型紙」で作られた柄や「刷毛引き」などの柄が作成されたのだとか。また、江戸からかみには「更紗」などの特殊な柄があります。


鳥の子(手漉きふすま紙/機械漉きふすま紙)

ふすま紙の王道と言われる襖紙です。
本来は雁皮(ガンピ)紙を指し、その色合いが鶏卵の殻の淡黄色ににているところから「鳥の子」と呼ばれています。紙料によって「特号紙(雁皮紙)」「一号紙(雁皮紙+三椏)」「二号紙(三椏)」「三号紙(三椏+木材パルプ)」「四号紙(マニラ麻+木材パルプ)」の5種類があります。


本鳥の子(手漉きふすま紙)

植物繊維を漉き上げた手漉きふすま紙は長く使用しても経年を美しいと感じる事の出来るふすま紙で、落ち着きと、深く高貴な風合いを求められる方におすすめするふすま紙です。

ふすまサイズである「三尺六尺(通称:さぶろく)」と呼ばれる大きな流し漉きの手漉きふすま紙を作っているのは、日本広しといえどもこの「越前」だけ。2024年現在、5件の漉き元で漉かれています。
さまざまな伝承技法で作られる手漉きふすま紙は自然の素材をあるがままに表現し、風格が漂います。和紙の原料である「楮(コウゾ)」「三椏(ミツマタ)」「雁皮(ガンピ)」に加え「麻」などを原料に漉かれ、手漉きならではの味と風格があり、褪色も少ないふすま紙です。
無地はもちろん、染められた繊維を流し漉きしたもの、染め繊維を使用して古典柄を描いたもの…など種類も豊富。

サンプルの中からお選び頂くこともできますし、多くはありませんが、当店事務所では実際に襖に仕上げたものもご覧頂けます。

越前紙漉き


上新鳥の子(機械漉きふすま紙)

「和紙の風合いのあるシンプルなものがいい」とおっしゃるお客様におすすめしているのが、この「上新鳥の子」です。価格もお手頃で、さまざまな色目と柄があります。原材料はほぼ木材パルプです。

住空間の和洋折衷が多くなり、すっきりとしたイメージに仕上げたいお部屋にも設置しやすい和紙ふすま紙。 荒い繊維の入った物、パール調光沢のあるものなど、種類も豊富。昨今の住宅事情に合わせて幅の広いもの、丈の長いものもあります。若い方から年配の方まで、幅広い年代の方にご利用いただける和紙系ふすま紙です。


新鳥の子(機械漉きふすま紙)

主に賃貸住宅に張られています。紙系の襖紙の中でもっとも安価なものです。「とにかく安く!」というお客様へおすすめ。
再生紙を利用して、製紙から模様付けまですべて機械でつくられています。再生紙で作成されているため繊維が短く破れやすくなっています。また、安価に出来ることを最大の特徴としているため、下張りなしで張る事が出来るように紙裏を茶色く仕上げられており、別名を「茶裏」と言います。
*地方によって呼び名は、異なるかもしれません。