襖(ふすま)の引手、襖(ふすま)の取手、デザインと種類

襖(ふすま)の引手、襖(ふすま)の取手、デザインと種類

襖(ふすま)の引手は、ふすまを開け閉めする際にふすま紙に直接手が触れるのを防ぎ、手垢などからふすま紙の汚れをを防ぐ役目を果たします。

襖(ふすま)の引手にもさまざまな種類があり、材質の違いはもちろん豊富なデザインがあります。高価な引手はひとつひとつ職人の手作りで作成されます。大量生産されるふすま引手は200円程度から。耐久性やデザイン、また長年使用できる引手を選ばれるのであれば、ある程度しっかりとした引手をつけられることをおすすめいたします。(価格は1,000円程度からあります)

注意)引手をお選びになる際はできるかぎり現物をご覧ください。カタログ等では材質や価格が違うにもかかわらず、同じようなデザイン引手はまったく同等に見えますが、実物を手に取ってみると風合いや重量感があきらかに異なり、時間の経過と共に良いものは風合いを増してゆきます。

ふすま引き手の材質による分類

材質や色付けの方法、原材料である鉱物の価格変動によって引手価格は変動します。
*職人さんの減少により、下記引手にも廃盤となっている商品がある可能性があります。
詳しくはお問い合わせください。

木製引手(生地もの)

楓、桜、黒檀、タモ、桑などさまざまな材質あり
黒檀 引手 竹 引手
木製引手(塗装)

木製の引手に塗装を施したもの。漆塗りの引手もある。
  漆塗り 引手
銀製引手 銀 引手 銀 引手
真鍮引手

銅と亜鉛の合金。加工性、耐食性に富む。色は金色に近く光沢がある
真鍮 引手 真鍮 引手
銅引手

銅は鉄と比べて酸化しにくく、軟らかいために延性が優れている
銅 引手 銅 引手
>鉄+真鍮 引手 鉄 真鍮 引手 鉄 真鍮 引手
鉄引手

豊富な金属資源で、他の金属と比べ安価で大量に生産されているが、錆びやすい
鉄 引手 鉄 引手
アルミ+鉄 引手   アルミ 引手
ステンレス引手   ステンレス 引手
プラスチック引手

*当店ではお取り扱いしておりません。

  プラスチック 引手
襖引手の形状

四角い引手には「チリ落とし」とよばれる形状のものが多くあり、引手にホコリがたまらないような形状になっています。丸い引手には「座もの」(上記「鉄+真鍮」や「アルミ+鉄」などの形状)と呼ばれ、飾りがついているものがあります。その他に丸引手には「寸ロク」(上記「真鍮引手」左のものや「ステンレス」の形状)と呼ばれるシンプルな形の物があり、土台に付ける穴の大きさが「座もの」とは異なります。

襖引手の色仕上げによる分類

襖引手にもさまざまな素材が使用されています。鉄、プラスチックなどを素材とする普及品は、機械によって製造されていますが、高級品の襖引手は職人の手によってひとつひとつ作られています。材質や色付けの方法、鉱物の価格変動によって引手価格は変動します。

職人さんの減少により、下記引手にも廃盤となっている商品がある可能性があります。
詳しくはお問い合わせください。

くすべ
価格…数千円~
■赤銅(漆黒・高級引手の代表的な色仕上げ)
よく磨いた銅または真鍮地金を、杉の葉、檜、松のカンナ屑を燃やした煙に燻べる。これを何度も繰り返し、煙の中の煤とヤニを丹念に付着させる。本来、赤銅とは銅と金の合金で、硫酸銅、緑青、明礬、水の混合液で煮込むことによって美しい紫黒色となるものであるが、引手では、くすべで色付けしたものを赤銅という。
赤銅 引手
煮込み
価格…数千円~
■素銅(オレンジ色・伝統的な色付け方法)
よく磨き出した銅地金を、緑青、硫酸銅を入れた銅鍋で、時間をかけてじっくり煮込む。イボタ、透漆、ニスで仕上げる。(真鍮地金のものもある)
素銅 引手
■宣徳/仙徳(からし色・伝統的な色付け方法)
よく磨き出した真鍮地金を、緑青、硫酸銅、水の混合液で煮込み、透漆、ニスで仕上げる。

宣徳 引手
錆づけ
価格…数万円~
■南部鉄(鉄錆色)
赤土をドロドロに溶いた中に、鉄の引手をつけ、取り出して炭火であぶる。この工程を20回ほど繰り返してきれいな鉄錆色をつけたもの。
 
漆塗り1

(焼き付け)
価格…数千円~
■潤朱(焦げ茶色・伝統的な色付け方法)
漆に松煙とベンガラを加え、丹念によく混ぜたものを、銅または真鍮地金に数度に分けてよく塗り込み、時間をかけて弱火で焼き付ける。
 
■五郎三(あずき色・伝統的な色付け方法)
漆にベンガラを加え、丹念によく混ぜたものを、銅または真鍮地金に数度に分けてよく塗り込み、時間をかけて弱火で焼き付ける。
五郎三 引手
漆塗り2 ■花塗り/目はじき塗り/拭き漆/溜め漆/蝋色磨き仕上げ(ふちと同様の仕上げ) 漆塗り 引手
生地もの
価格…数千円~
木質を生かした生地引手もさまざまなものがあり、黒檀や黒桑、紫檀、竹などがある。 木地 引手
変わりだね
価格…数千円~
陶器や七宝焼などの引手 陶器 引手
七宝 引手
メッキ仕上げ
価格…数百円~
■紫、古美、銀古美、蓬莱色
銀を下地に各種薬品で着色し仕上げる
メッキ 引手
■赤銅メッキ、銅古美、古美
銅を下地に各種薬品で着色し仕上げる
メッキ 引手
■宣徳メッキ
真鍮を下地に各種薬品で着色し仕上げる
メッキ 引手
■銀メッキ
純銀を溶かし、電気メッキする
メッキ 引手
宣徳「ひさご」の工程例
ひさご
ひさご
ひさご
  • ひさごのふちを作る。真鍮(銅7:亜鉛3)を細く切り、輪にして蝋付けする。
  • 輪にしたふちを型にはめ、木槌でたたいてひさご型にする。
  • もうひとつふちを作るため真鍮の地金をプレス機でひさご型にぬく。
  • 金床の上でたたいてゆがみをならす。
  • ふたつのふちをつけて、針金で数カ所止めて固定する。
  • やすりで表面を整える。
  • きさげでやすりあとを取る。
  • 地金をひさご型プレス機で抜いて、底をつくる。
  • ふちと底を蝋付けする。
  • やすり、きさげで表面を整える。
  • 朴の木炭で炭研ぎし、表面をいっそうなめらかにする。
  • 桐の棒に朴の木炭の粉をつけて、内側をしっかり磨く。
  • 宣徳の色付けをする。硫酸銅、緑青、水を混ぜた液を沸騰させた中に、
      磨き上げたひさごを入れ、4~5分煮る。
  • 取り出して布で拭き、自然乾燥する。
  • *参考文献「襖考」